2011/05/19 (Thu) 理念は何だろう
材料の仕入れのタイミングを誤ってしまったため、一昨日からポッカリ時間が空いてしまいました。
と言っても、やる事は無限にあります。
さてどれから手をつけよう。

ここ何年もずっと、書かなければと思いつつ先延ばしてきたのが、HPのイントロダクションです。
要は六度九分の紹介、カッコよく言えば理念を掲げるべきところです。
重い腰を上げ、それを書こうと思い立ちました。

しかしスラスラ書けるなら、腰が重くなるはずもありません。
六度九分を通じて何を実現したいかと問われると、うっと言葉に詰まってしまいます。

ルアーを作って売って生計を立てる、というのは税金を払うとか、労働の義務を果たすためであって、それ自体を目指しているわけではありません。
いや、それは言い過ぎか。
これでご飯を食べ続けていくことを目指しているけれど、それは理念ではない。
それは最低限果たすべきことです。
素晴らしいルアーを作って、魚が釣れてハッピーな人が世の中にちょっとでも増えれば、というのももちろんあります。
でもそれはわざわざ掲げるほどのものでしょうか。
射程が近すぎやしないか。

あれこれ考えているうちに、ちょっと前に西根さんがブログで書かれていたことに思い当りました。

それは、送られてきた釣果写真についての話です。
釣れた魚の写真を撮る時には、魚を濡れた草の上に置くとダメージが少ないので、皆さんも心掛けてもらえると嬉しいというような内容でした。
ただそれだけの話です。

でも、これを書くのって凄く勇気がいることだと思うんですよ。
少なくとも私にとってはそうです。
と言うのも、魚が釣れて喜んでいるユーザーさんに「魚を丁寧に扱って下さいね」と伝えるのは、喜びに水を差すことになりかねないと感じるからです。
しかも自分が釣りを始めた頃を思い返すと、ひどい魚の扱いをしていたなと思い当たる部分もあるのです。
さらにどういう風に魚を扱えばダメージが少ないかという、科学的な根拠はなかなか見つけられません。

海ルアーのK-TENで有名な二宮さんの著書「本のK-TEN」の中では、魚体に触る事のダメージの大きさについての記述がありました(P215~)。

「ヒラスズキの生態を知るために、仲間や専門の研究者と共に、魚の捕獲から始まった。準備に数年かけ、方々で釣った魚を無傷で研究所の水槽に移した。
ところが、安心したのもつかの間。傷ひとつない魚体に翌日から数日後に、捕獲時に触った手の跡が浮かび上がり、日にちがたつにつれウロコがとれ、血がにじみ、やがて一ヶ月もすると皮まで溶けて無残な状態になってしまった。生態研究以前の問題である。
また、腹部分を持ったり、押さえたりした魚体は当日元気でも、その後急速に弱る。解剖すると内臓に出血が見られた。」


これを読んだら、今の自分の魚の扱いにもまだずいぶん改善の余地がありそうです。
そう考えると、私が「魚をコンクリートの上に置かないで下さい」と声を上げるのは放漫なんじゃないかと感じてしまうのです。

たぶん(たぶんですが)、似たような葛藤が西根さんにもあるんじゃないかと想像します。
けれど批判されたり、ユーザーさんをがっかりさせたりする可能性を引き受けてでも「魚を大事にしよう」というメッセージをまず発信する。

そういう態度は、自分のルアー作りを通じて「良い釣人」を増やしていくぞ、というような根底に流れる意思がないと、インターネットネットに上がる前に自分自身に潰されてしまう言葉だと思います。
それはルアーを売る上では余計な一言になりかねないから。

それと引き換えにしてでも伝えたい事。
恐らくそこに理念があります。

comment

強制してるわけでなく、けど魚にとって優しい取扱いを常日頃から行ってくれているアングラーには感謝ですよね。
そして釣れてきてくれた魚にはもっと感謝ですよね。
今まで以上に私も気をつけていかねば です。
2011/05/19 16:58 | URL | ナベちゃん [ 編集 ]

初めまして。

魚の扱いにはいつも気をつけているつもりでしたが、引用の部分を拝見して衝撃を受けました。思っていたより遥かに大きなダメージを受けているのですね。。。

今回の記事、書いていただきありがとうございました。
僕ももっと気をつけていきます。
2011/05/19 17:26 | URL | うっちー [ 編集 ]

「射程が近すぎやしないか。」
すごいです。力強さを感じます。
目の前のことに対処しながらも遠くを想う。
大いなる期待と軽い嫉妬をもって六度九分を注視していきたいと思います。

40になりたてアベシゲル
2011/05/19 20:51 | URL | アベシゲル [ 編集 ]

自分も行友さんの文章を読み、自身の魚に対する扱いを振り返り、ハッとさせられました。

気付かせて頂いて、本当にありがとうございます。

リリースした後のことも考えなければ、キャッチ&リリースなど意味が無いですよね。

リリースしても直ぐに死んでしまうのなら、その命を尊び繋ぐことを考えるのならば、そうせずに食べるべきなのかもしれません。


私達は魚達を傷つけることで、喜びや感動を得ているのだと思います。

そして、その喜びや感動を得る為に探究し、魚達を、環境を、知ろうとしているのだと思います。

その知識を得るに到った人達が、魚達や環境を守る方向を発信していくことは、とても大切なことなのではないかと思います。

確かに、そういった発信をするには、リスクは付き物だと重々承知しています。

だからこそ、自分は西根さんを尊敬して止まないのです。

そういったことを理念として掲げることは、決して容易なことではなく、決断に勇気がいることと思いますが、自分は、そんな六度九分を純粋に応援させて頂きたいと思います。

駄文、失礼致しました。
2011/05/20 01:20 | URL | M木 [ 編集 ]

実は…コンクリに置いた釣果報告が何回か続いたので西根さんにクレームを出してしまいました。
でも西根さんも、気にはなってるんだけどわざわざ報告してくれてる人に置く場所考えてくれって、ガッカリさせたり怒らせたりしないだろうかと、どう伝えたら良いもんかと以前からかなり悩んでいらっしゃったようです。
だから間接的に伝えられるよう、ベタ誉め出来るような魚の扱いバッチリな釣果報告送って欲しいって言われました。
それから僕もまた改めて魚の扱いについて考えさせられてます。
単純ですが難しい問題ですね。
2011/05/20 07:59 | URL | てつま [ 編集 ]

>なべさん
結局は触らずに水際でフックを外してやるのがベストのようですね。
でも触りたいんですよね~(苦笑
そう言えば甲野善紀さんの本の中に「矛盾を矛盾のまま矛盾なく扱うのが術である」というようなことが書いてありました(うろ覚えですが)。
引っかかる話です。釣りって矛盾が多すぎるので。

>うっちーさん
衝撃を受けるような箇所を無意識に選択してしまったような気がいたします(爆
これってマスメディアのやり方ですよね、、、
それはさておき、引用した文章の前後もおもしろい内容がふんだんに含まれているので、「本のK-TEN」ぜひご一読ください!ドキドキが待ってます。

>アベシゲルさん
やや妄想が過ぎる26歳です。
あまり近いところばかりを見ていると、ルアーを作り続ける理由が薄れてしまうんですよ。
金のため、であるなら他の仕事でも良い。
みんなを幸せに、であるなら釣りでなくても良い。
釣りにしか担えない役割ってなんなんでしょうね。
それを考えて伝えていくのが文系アングラーの仕事だと思っております。
と言うわけで続きを書かねばです。

>M木さん
「本のK-TEN」は読まれました?
私は痴虫の松本さんに頂いたんですが、氏いわく「釣り界の五輪の書」だそうです。
読了後の私の感想は「並みの釣り本100冊分くらいの価値がある」でした。
超オススメです!
本の中でこうありました。
「魚は死ネば沈んでゆく。この事実は案外重要である。私たちが海を美しいと感じるのもそのおかげだ」
もし死んだ魚が浮くのであれば、キャッチアンドリリースは広まらなかったんでしょうねぇ。
業界人の端くれとして避けては通れない問題だと覚悟しております。

>てつまさん
西根さんのブログで急に写真についての言及が増えたので、何かあったのかなと思っていましたが、なるほど納得いたしました。
「クレームを出してしまいました」と謙ることはないと思います。
背中を押す声でもあったはずだからです。
いずれにしても、魚が居なくなってリアルに困るのは釣り業界なので、啓発する役割も果たしていかねばと思います。
難しいです、本当に。
2011/05/20 13:20 | URL | 六度九分 [ 編集 ]

もっと酷いのが外道扱いされる魚です。
よく見たり聞いたりするのが、バス狙いで雷魚や鯰が釣れ、雷魚は気持ち悪くて近付けないし触れない、ルアーを取り除かずラインを切って雷魚や鯰を足蹴にし放す…そしてルアーをロストしたことを悔いる。
プロが動画などで、ギョライですわ、ズーナマですわと残念そうに抜きあげ、ルアーが壊れたことを文句言ってたり…その扱いの酷さにガッカリしました。
故に私は釣りを始めた当時のように、また雑誌やDVDといった類いの物は一切見なくなりました。
2011/05/21 10:06 | URL | カワサキ [ 編集 ]

意識の低さは確かに残念なことです。
他人が自分の行為を見てどう思うか、という想像力が働かないのが不思議ですが、もしかすると他人の範囲が狭いのかもしれませんね。
結果的に、それが自分の首を絞めることになると思います。
2011/05/22 18:55 | URL | 六度九分 [ 編集 ]









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