2010/02/04 (Thu) ハンドメイドの功徳
一月の初旬にはルアーの製作を始めるつもりでバルサを注文したら、なかなか届かず、早くも2週間予定がずれ込んでいます。 目下2月末のリリースを見込んでマーマーのダブルフックモデルを仕込み中ですが、いまだ下地のコートすら出来ておりません。
いやーどうなることやら。

六度九分では未だに板材からボディを削り出すという地道な作り方をしています。
実は以前、ボディを外注に出そうとした事もあるのですが、いざ加工会社とやり取りをしてみると、なかなか自分が必要とするシェイプが安定して出ませんでした。
じゃあ手で削るか、というところに落ち着いたまま今日に至るというわけです。

ルアーを作るという行為は、職人の仕事は徹底的にルーティンであり、幾つも幾つも同じ作業を繰り返すので、ある意味では退屈だしクリエイティビティに欠けると思ってきました。 ブランクを外注に出そうとしたのも、新しいルアーを作る時間を捻出するために他なりません。
しかし5年続けて知ったのは、ある意味ではそれが間違っていたという事です。

なぜハンドメイドを続けるのかとしばしば聞かれますが、どこまでをハンドメイドと呼んで然るべきかは長らく私の疑問でした。
そもそも人の手を介さないモノ作りは極めて少ない。
たとえが古くて恐縮ですが、冷凍ギョーザの食中毒がニュースになった時、私が一番気になったのはパッケージに「手作り」と印刷してあった事です。
確かに人の手を通じて作られていることには間違いありません。
しかし、テレビに映し出された無機質な工場で作られるギョーザが「手作り」と謳われることに、どこか違和感を覚えました。

ハンドメイドという単語の発明が迫られた背景には、18世紀に起こった産業革命があるはずです。 この言葉を必要としたのは、恐らく当時の職人でしょう。
「ワシらが作ったモンと機械が作ったモンを一緒にすんな!ぷん!」と。
しかし時は流れ、ハンドメイドという言葉はずいぶんと消費され、くたびれ、手垢にまみれました。 私のような個人製作者と、マスプロダクトが謳う手作りとを区別する力はもうほとんど残っていません。

それゆえ、エビスジーンズの山根社長が言った「ハンドメイドはホームメイドや!」という発言には目から鱗でした。 この慧眼の手柄は「手と機械」という作業者の区別から、「家と工場」という規模の問題に意識をスライドさせた事です。 
先のギョーザの件で私が覚えた違和感は、あまりに大規模であるがゆえに、実際にギョーザを作った誰かの手が感じられなかったことに由来します。 ハンドメイドという言葉に託されたのは、事実レベルで手作業を通じたかどうか以上に「人が作ったと感じられる暖かみ」を伝える事にあった訳です。

そういう意味で、暖かみと規模の問題を内包するホームメイドという言葉はなかなか正鵠を得ているように感じますが、何かがもう一つ足りないような気もします。 それが何かを探り当て、かつ新たな地平を展望する言葉の発見は、まだ先の長い労の多い仕事のように思われます。

ええと何の話でしたっけ。
今週、ン百個のルアーのアウトラインを出したり、ダボ用の穴を開けたり、ウェイトを詰めたりしながら考えたのはそういうことでした。
同じ作業を延々と繰り返す職人仕事の特徴。
それは、手が動き続けることで脳が微弱に刺激されつつも、思考を司る部位はヒマなので長時間に渡って粘り強くシンキングタイムが続くことです。

クリエイティブであるとは、単に新しいルアーを作り出すことではありません。
新しいルアーを作ろうとして頭を動かす時は、ルアーについてのアイディアは生まれるけれど、その他のことが入り込む隙間が無い。
つまり「ハンドメイドの起源とゆくえ」を考えるような「遊び」を作るのが、ハンドメイドだと申し上げているわけです。

私はそれが死活的に重要に思える。
ただただ手を動かし続ける時間は、思いもよらぬことを思いつくための時間です。
アイディアの萌芽をつかみ取る時間であり、クリエイティビティの源泉です。
手仕事の、ハンドメイドの功徳はそこにあるように思います。

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